非平衡ダイナミクス研究室
Japanese/ English
home
研究室紹介
メンバー
セミナー
論文
リンク
アクセス
hishi

研究室内セミナー、集中講義の記録です。

〜研究会のご案内〜

Nara Workshop on Nonlinear Dynamics

under HAS-JSPS Joint Research Project


2016年2月20日 (土) / 20 February 2016 (Sat)

詳細はこちら / Workshop info.

次回のセミナーはこちら

講師:島 伸一郎 氏
   (兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科)
題目:局所大域結合振動子に現れる振動パターン
日時:2016年5月20日(金)午後3時
場所:奈良女子大学理学部C棟141教室

概要:
 同相タイプの局所拡散結合と非同相タイプの大域結合を持つ、 線分上に与えられたある種の位相振動子系について考える。
 パラメータを調整することで結合の局所性と大域性のバランスを変えると、 系の安定状態が一様定常解から, 非一様定常解を経て, 振動解へと分岐すること見る. 特つ、大域性の強いパラメータ領域において、振動解の軌道が微小な摂動によって 大きく乱れるが、しばらく経つと元の周期解に戻ってくることを数値的に示す。
 このことは、振動解が線形不安定であるが大域安定であることを示唆する。
 この興味深い性質は、大域結合極限における系に、安定なヘテロクリニック・ループによって結合された2点クラスター状態が存在することと密接に関連していると考えられる。


▼2015年度過去のセミナーはこちら▼
講師:石崎 章仁 氏
   (自然科学研究機構 分子科学研究所)
題目:凝縮相量子ダイナミクスの理論と光合成エネルギー移動・電荷分離への展開
日時:2016年2月22日 (月) 15:00~16:30
場所:奈良女子大学理学部C棟141教室

概要:
 光合成光捕集系における色素タンパク質複合体は、捕捉された太陽光を確実に電気化学エネルギーに変換できるよう巧妙に組織されている。捕捉された太陽光が色素分子の電子励起エネルギーとなり、ほぼ100%の収率で反応中心へ輸送され電気化学エネルギーに変換される。しかし、その驚異的なエネルギー変換効率の物理的理由は未だ不明である。
 従来、凝縮相におけるエネルギー移動を記述する標準的な理論として「電子励起系とタンパク質環境との相互作用を摂動として扱うRedfield理論」と「電子励起間の静電相互作用を摂動として扱うFörster理論」が用いられてきた。ところが、天然の光合成光捕集系におけるエネルギー移動は両理論の妥当性が明らかで無い中間領域で実現しており、その動態の記述と理解は光合成光捕集系の化学物理・生物物理学研究において大きな問題として残されていた。
 多くの理論研究が高次摂動論の構築に向かう中で、我々はタンパク質環境が誘起する色素分子の電子励起エネルギーの「動的揺らぎの時間スケール」に目を向けた。動的揺らぎの相関時間を実験的に得ることができる非線形レーザー分光法3-Pulse Photon Echo Peak Shift (3PEPS) のデータから、揺らぎの時間スケールがエネルギー移動のそれと同程度であることを見出し、Redfield理論の欠陥はその低次の摂動論に起因するのではなくマルコフ近似すなわち動的揺らぎの時間スケール記述の欠如にあることを指摘した。この洞察に基づき、色素電子状態の揺らぎとタンパク質の局所的な歪み・応答の間に成り立つ揺動散逸関係に注意しながら動力学モデルを構成し数値計算を行うことでRedfield理論とFörster理論とを補間することに成功した。
 講演では、両理論では記述不可能な中間領域で起こるエネルギー移動ダイナミクスの様相、特に、天然の状況に対応するパラメータ領域でこそエネルギー移動の速度が最大化・最適化されていることを議論したい。
 さらに、量子情報物理学の研究領域で量子エンタングルメントの測度として提案されたconcurrenceを用いて動的揺らぎに曝されたエキシトン(複数の色素に非局在化する電子励起の量子的重ね合わせ状態)の頑健性・脆弱性を考察し、さらに、量子ダイナミクスの数値計算結果および電子励起エネルギーの揺らぎを反応座標とした断熱自由エネルギー面を解析することで、天然の光合成系に対応するパラメータ領域においてはエネルギー移動に要する活性化自由エネルギーがほぼ0となっていることを示し、光合成光捕集系における高速エネルギー移動の物理的起源を議論したい。

2015年度 非平衡ダイナミクス集中講義

『同期現象の理論と化学・生物学・工学への応用 』
2016年1月6日 (水)~1月8日 (金)

郡 宏 氏
(お茶の水女子大学 基幹研究院 情報科学科 准教授)

詳細はこちらをご覧ください。


講師:小谷野 由紀 氏
   (千葉大学大学院 理学研究科 博士後期課程1年)
題目:有限領域に閉じ込められた樟脳粒の自己駆動運動
日時:2015年12月16日 (水) 13:00~14:30
場所:奈良女子大学理学部C棟141教室

概要:
 運動エネルギーを生み出す構造を持ち、摩擦などによってエネルギーを散逸しながら自発的に動き回る系は、自己駆動系またはアクティブマターと呼ばれる。生物は自己駆動系の典型例であるが、複雑な運動メカニズムを持つので、生物のような運動を簡易な物理化学系で模倣した実験系も広く研究されている。
 水面に浮かべた樟脳粒はその一例である。樟脳粒は水面に界面活性剤である樟脳分子を拡散し、表面張力勾配に駆動されて動くが、樟脳分子の濃度場は領域の境界から影響を受けるため、樟脳粒の運動は水面の形状に依存する。例えば、擬1次元的な水面に樟脳粒を浮かべると、水路長に応じて、水路の中心に静止した状態や水路の中心位置まわりの振動運動が観察される。実際に樟脳粒の運動に関する数理モデルを少数自由度の力学系に縮約することで静止状態と振動運動する状態の分岐構造を調べた。
 さらに、樟脳粒の運動する水面の領域を2次元円形領域に拡張すると、静止状態が不安定化したときに表れる運動は振動運動や回転運動などの候補があり、どのような運動を示すのかは自明でない。そこで1次元有限系と同様の解析方法によって安定な運動を分岐論の観点から調べた。

講師:山方 優子 氏
   (京都大学大学院理学研究科 地球惑星科学専攻 博士後期課程1年)
題目:鉄安定同位体を用いた海洋生物の鉄代謝評価
日時:2015年12月11日 (金) 15:00~16:30
場所:奈良女子大学理学部C棟141教室

概要:
 「鉄」は多くの生物にとって生きていくのに欠かせない元素であり、また鉄の存在が生物生産とも大きく関わっていることが知られている。しかし、海洋表層では陸上環境に比べて鉄存在度が圧倒的に少ない(<10-7wt%)ため、海洋と陸上という鉄存在度の全く異なる環境に生きる生物間では鉄代謝機構が異なる可能性が考えられる。
 生体における鉄代謝を知るために、鉄安定同位体比(δ56Fe/54Fe)を用いた研究が行われている。陸上生物の生体組織(血液、肝臓、筋肉等)に含まれる鉄の同位体比は上位捕食者になるつれ系統的に低くなり、また組織ごとの鉄同位体比には差があることが知られている(Hotz et al., 2011; Walczyk and Blanckenburg, 2002, 2005)。これは、動植物が食物から軽い鉄同位体(54Fe)を優先的に摂取することを意味している。対して、海洋生物に関する報告例は限られており(Walczyk and Blankenburg, 2002)、海洋中の鉄が海洋生物の生体内でどのように吸収・代謝されているのかは不明な点が多く残されている。また、海洋環境において鉄がどのような食物連鎖を経て再利用されるかを知ることは、海洋における生物学的鉄循環機構を解明する最も基盤的な情報となる。こうした背景により、本研究では生体内での鉄同位体組成の変化を利用して、海洋生物の鉄代謝や鉄のバイオサイクルに関する新たな知見を引き出すことを試みている。
 分析に関しては、鉄同位体比の微小な変動を検出するため、生体試料の酸分解、陰イオン交換法による鉄の分離・回収を行った後、多重検出器型誘導結合プラズマ質量分析計(MC-ICP-MS)による高精度高分解能測定を行った。
 本発表では、海洋と陸上生物の生体内での鉄代謝の違いと、海洋生物の生態環境あるいは動態の違いの影響などを議論する。また、分析に至るまでの化学的前処理と分析に用いたMC-ICP-MSの仕組みについても紹介する。

講師:小西 哲郎 氏
   (中部大学 工学部 教授)
題目:ヒメボタルの野外観察と解析:発光個体数の時間変動と相関
日時:2015年11月20日 (金) 15:00~16:30
場所:奈良女子大学理学部C棟141教室

概要:
 ヒメボタル (Luciola parvula) は、日本の陸地に住むホタル科の昆虫である。成虫は雌雄共に発光することで相手を発見・認識し繁殖行動に至ると考えられている。
 ヒメボタルの発光を野外で観察していると、いくつかの不思議な特徴に気がつく。なかでも、発光している個体数が、数分から数十分のスケールで変動しているように感じられる事は興味深い。この変動は、ヒメボタル成虫の相互の通信と行動を考える上で重要な手がかりとなり得ると思われるが、この変動をデータとして捉えることは、少なくとも我々の知る限りではこれまで行われていなかった。
 我々は愛知県内のヒメボタル生息地で2時間から5時間にわたる撮影を数夜行い、一定時間内の発光数を時系列として得ることでこの変動を捉えることに成功した。講演では、まずヒメボタルの生態について知られていることを簡単に述べた後、観察方法とそれにより得られた発光数の時間変動を紹介し、この変動と成虫間の相関に関する解析を紹介する。
 時間があれば、今後の課題についても議論したい。

講師:水口 毅 氏
   (大阪府立大学大学院 工学研究科 数理工学分野 准教授)
題目:家系図ネットワークの構造と伝搬過程
日時:2015年9月26日 (土) 15:30~17:00
場所:奈良女子大学理学部C棟141教室

概要:
 ヒトも含めて有性生物の家系図はネットワーク構造を持つことが知られているが、 その構造は複雑であり、その特徴づけは生物学的にも興味深い問題設定である。 我々は家系図ネットワークを有向非循環グラフとみなし、祖先と子孫をつなぐ経路 上の伝搬過程に着目し、モデルと実データの解析結果を紹介する。

講師:西口 大貴 氏
   (東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 D2)
題目:長距離秩序と巨大な密度ゆらぎを示すバクテリアの集団運動
日時:2015年8月24日 (月) 14:30~16:30
場所:奈良女子大学理学部C棟141教室

概要:
 鳥や魚などの群れ運動に動機付けされ、自己駆動粒子系の集団運動の研究が盛んにおこなわれている。数値計算[1]や連続場理論[2]により、Vicsekモデルなどの集団運動のモデルには様々な興味深い性質が見つかっている。その例として、「巨大な密度ゆらぎ」がある。これは、平衡系やランダムな系では中心極限定理により粒子数密度ゆらぎが平均粒子数密度の0.5乗に比例するのに対して、自己駆動粒子が集団運動を示す秩序相においては0.8乗に比例するというものである。
 実験的検証を実際の鳥や魚の群れでおこなうことは困難である。そこで、単純な生物の例としてバクテリアを用いたり、あるいは生物を模した自己駆動粒子として加振粉粒体系[3]・コロイド系[4, 5]・フィラメント状タンパク質[6, 7]などが用いられてきた。しかし、広い視野で粒子の向きの揃った秩序相を実現し、Vicsekモデルなど単純なモデルと対応付く結果を十分な精度で得ることはできていなかった。
 我々は、集団運動研究の当初の動機である生き物を用いて、理論研究に対応付く秩序相を広い領域で実現した。通常の長さの10〜20倍程度まで成長させた“細長いバクテリア”を擬2次元面内に閉じ込めることで、ネマチックな長距離秩序を示す集団運動を実現した。この秩序相において、同様の対称性を持つ集団運動のモデル[8]で示されていた密度ゆらぎの指数と整合する結果を4桁に渡って得た。
 本講演では、まず対称性の異なる集団運動のモデルの先行研究をいくつか概説し、実験で測るべき量として、密度ゆらぎ・長距離相関の有無などの性質を解説する。その上で、バクテリアを用いて精度の良い実験をおこなうための我々の実験デザインを解説し、得られた実験結果を示す。
[1] H. Chaté, et al., Eur. Phys. J. B 64, 451 (2008)
[2] J. Toner and Y. Tu, Phys. Rev. E, 58, 4 (1998)
[3] J. Deseigne, et al., Phys. Rev. Lett. 105, 098001 (2010)
[4] A. Bricard, et al., Nature, 503, 95 (2013)
[5] D. Nishiguchi and M. Sano, arXiv 1506.06591 [cond-mat.soft] (2015)
[6] V. Schaller and A. R. Bausch, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 110, 4488 (2013)
[7] Y. Sumino, et at., Nature, 483, 448 (2012)
[8] F. Ginelli, et al., Phys. Rev. Lett. 104, 184502 (2010)

▼2014年度▼
講師:永幡 裕 氏
   (北海道大学生命科学院 生命融合コース D3)
題目:Markov連鎖の持つ時間階層構造について
   :複雑分子系の異性化反応ネットワークを例に
日時:2015年1月5日 (月) 15:00~16:30
場所:奈良女子大学理学部C棟141教室

概要:
 十分に長い時間経つと平衡状態に達する有限Markov連鎖(有限 でエルゴード的かつ可逆)の時間階層構造について、第一原理計算から反応経路自動探索手法[1]を用いて取り出してきた異性化反応ネットワークを使って、 数値的な観測結果とアルゴリズムを用いた予測を議論する。
 
 様々な物理現象における変化には、何らかの状態変化を伴っている場合が多い。分子の吸収・発光スペクトルの変化、感染症の拡大、人工衛星の惑星圏間の移動、細胞内外でのシグナル伝達等が挙げられる。例えば、準安定状態が何千もあり、多様な時空間スケールをもつ系において、どのような理論的な枠組みを用いれば複雑な状態から状態へのダイナミクスを自然に理解することができるだろうか。
 本研究では分子の異性化反応ネットワークを例に、そこに埋め込まれた時空間階層構造の見つけ方と予測の仕方について提案する。ここでいう時間階層構造とは、複数の状態があたかも1つの状態であるかの様に振る舞う現象:反応速度論において定常状態近似や迅速平衡近似と呼ばれている振る舞いを指す。こうした近似を用いれば適切な遷移率を求めることができるが、複雑なネットワーク上でどのようにそれらの近似が達成されるかについて明らかにされているとは言いがたい。我々は、ある複雑分子系(C5H8O)の反応速度式(マスター方程式)をMarkov連鎖に変換し、そのワンステップの(観測)時間間隔を変えることで、状態間遷移がどの様に粗視化されてゆくのかについて観測した。また、アルゴリズムを用いて反応ネットワークを解析することで、それらの時空間階層構造を予測することにも成功し、実験結果を再現することにも成功した。
 我々の研究成果は、タンパク質一分子時系列解析を含む、多彩なMarkov連鎖に基づく手法への応用はもちろんのこと、Perron-Flobenius演算子の離散化と組み合わせることで多様な力学系への応用が期待される。特に後者は、化学反応における状態の直接抽出に対応し(反応速度定数をよく見積もる現象論である)遷移状態理論の理論体化に対応する。時間があれば、Markov連鎖の時空間階層構造に対して理論的枠組を与えるための幾つかの考察を紹介する。

2014年度 非平衡ダイナミクス集中講義

『「群れ」の動力学 』
2014年12月15日 (月)~12月17日 (水)

早川 美徳 氏
(東北大学 教育情報基盤センター 教授)

詳細はこちらを ご覧ください。


講師:高木 拓明 氏
   (奈良県立医科大学 / 医学部 / 講師)
題目:細胞運動解析から細胞の確率的情報処理機構を探る
日時:2014年11月27日 (木) 15:00~17:00
場所:奈良女子大学理学部C棟141教室

概要:
細胞は,明示的な外部刺激が存在しない場合にも自発的なダイナミクス を有する。 その能動的な「ゆらぎ」の機能的意義を解明することは,細胞システムの設計原理を 探る上で重要である。我々は細胞の自発的な運動(外部刺激非存在下でのランダムな 運動)に着目し、1細胞計測による定量的かつ豊富な実験データに基づいた理論と実験 の融合研究を実施して来た。具体的には細胞性粘菌を用いた2D運動軌跡データを基に、 ブラウン運動の解析を踏まえた各種統計解析を実施した結果、細胞の自発運動は複数の 時間スケールを伴う異常拡散を示し、それは細胞極性(非対称性)や速度ゆらぎの乗算性 を取り入れた一般化ランジュバンモデルで記述出来ること、及び細胞の走電性応答 (電場入力に対して示す方向性運動)がその自発運動を適宜バイアスすることによって 実現されており、野生型細胞の運動速度の記憶項は、入力変化に対して柔軟に追随する のに適した強度となっている可能性、などを明らかにして来た。
 本セミナーではそれら一連の結果について紹介する。また、結果の一般性を探る為、T細胞の運動解析も同様な立場から進めている。その共通性と差異についても触れたい。

講師:R. Stephen Berry 氏
   (The University of Chicago 教授)
題目:Matching the Macro and the Micro
日時:2014年11月14日 (金) 16:00~17:30
場所:奈良女子大学理学部C棟141教室

概要:
Since it has become possible to study small systems, such as atomic and molecular clusters of several or tens of atoms,we are finding examples of phenomena that are well described at the macro level, e.g. by traditional thermodynamics, that appear to violate those descriptions when we try to apply them to small systems. A vivid example is the way small clusters violate the Gibbs Phase Rule. We are just beginning to understand how to reconcile these apparent violations and to match the macro and micro approaches by finding the causes of the apparent violations and then determining the approximate maximum size of systems for which we could observe such apparent violations. At present, we see many more open questions, situations still to be explored, than resolved examples. Rather, we now recognize how we can approach those open problems systematically.

講師:Normann Mertig 氏
   (首都大学東京 DAAD-JSPS博士研究員)
題目:Complex paths for regular-to-chaotic tunneling
日時:2014年10月16日 (木)15:00~16:30
場所:奈良女子大学理学部C棟141教室

概要:
We study generic Hamiltonian systems where regions of regular and chaotic motion coexist in phase space. While classically these regions are separated, quantum mechanically dynamical tunneling from the regular to the chaotic phase space region occurs. We study this regular-to-chaotic tunneling process both quantum-mechanically and semiclassically. For its semiclassical understanding we develop a prediction which is based on orbits of the complexified dynamics.
We show that our approach gives excellent predictions for model systems like the standard map. We further comment on extensions of these results to generic mesoscopic devices like optical microcavities and microwave billiards.

講師:佐野 幸恵 氏
   (筑波大学 システム情報系 社会工学域 助教)
題目:ソーシャルメディアを用いた社会の雰囲気の観測
日時:2014年7月17日 (水)15:00~17:00
場所:奈良女子大学理学部C棟141教室

概要:
 インターネットの普及により,ブログやツイッターに代表されるソーシャルメディアへの書き込みが増加し,その結果,ソーシャルメディアには現実社会で起こる季節性イベントやニュースなどの大衆の興味が反映されている.さらにそれらに関する単語の出現頻度には,ベキ関数などの明らかな数理的なパターンも観測されている[1].
 本発表では,さらに一歩踏み込み,単純な単語頻度変化を超え,より曖昧な社会の感情や雰囲気といったものの観測可能性について議論する. 本発表では,まずソーシャルメディアに関する最先端の研究やIT企業の取り組みを紹介し,われわれが観測した東日本大震災時の日本のブログにおける感情変化について報告する.
 本発表は,高安美佐子氏(東工大総理工)と高安秀樹氏(ソニーCSL)との共同研究である.

[1] Y. Sano, K. Yamada, H. Watanabe, H. Takayasu, and M. Takayasu, Phys. Rev. E, 87, 012805 (2013).

講師:濱田 実樹 氏
   (奈良女子大学 人間文化研究科 複合現象科学専攻 D1)
題目:時間遅れを伴う造血幹細胞の動態モデル
日時:2014年7月9日 (水)15:00~17:00
場所:奈良女子大学理学部C棟141教室

概要:
 造血幹細胞は、血液の主要な細胞成分である赤血球や白血球の起源となる幹細胞であり、主に骨髄に存在している。造血幹細胞は多分化能と自己複製能をもちあわせていて、これらの能力を以て生涯にわたり自身の恒常性を保つことで、全身の血液成分や免疫系の構成を支えるという重要な役割を担っている。
 造血幹細胞一つから血液を構成する細胞成分を生み出すことができる能力をもつため、異常な造血幹細胞を除いた骨髄に正常な造血幹細胞を移植し骨髄の造血を正常化させる造血幹細胞移植は血液性の重篤な疾患に対して有効な治療法であるとされている。造血幹細胞数の動態は生体現象そのものに対して大きな影響を与えているといえる。一方で造血幹細胞の動態にはさまざまな因子が関係していて具体的にどのような仕組みで恒常性が維持されているのか、分化先が決定されているのかなどは未解明である。
本研究では、自己複製期間による時間遅れが造血幹細胞の動態にどのような影響を与えているかについての解明を試みる。
最近の研究において、造血幹細胞のみが持つと考えられていた自己複製能がその分化先である前駆細胞においても確認されることが明らかになっている。本研究ではこれらをふまえ造血 幹細胞と前駆細胞の 2 種系モデルを構築しその振る舞いを解析する。
解析により、造血幹細胞から前駆細胞への分化が起こらない場合には両者の平衡解が局所安定である時間遅れのときも、移入率をある値以上としたときに造血幹細胞、前駆細胞ともに不安定化して振動解をもつことが明らかになった。
このことから造血幹細胞から自己複製能をもつ前駆細胞への分化が原因となって振動が起こる可能性が示唆される。解析結果をふまえ、振動が引き起こされる具体的な要因について考察をする。

講師:小川 駿 氏
   (京都大学情報学研究科)
題目:平均場ダイナミクスにおける遷移線形化による非線形応答理論
日時:2014年6月10日 (火)15:00~17:00
場所:奈良女子大学理学部C棟141教室

概要:
 長距離相互作用を有する大自由度ハミルトン力学系は,長時間,非平衡準定常状態に留まってから衝突効果によって熱平衡状態へゆっくりと緩和することが知られている.系のサイズが十分大きい場合,我々は熱平衡状態を観測できず,準定常状態しか観測できないことがある.この準定常状態はVlasov方程式(無衝突Boltzmann方程式)の安定定常解に対応する[1].本講演では主に, 準定常状態における外力への非線形応答についてお話する.

 ここでは素朴な摂動論は用いず, 遷移線形化という方法[2]によって外力への応答を高次摂動を用いずに求める.遷移線形化とは,無限時間後の終状態を仮定し,Vlasov方程式をその終状態の周りで “線形化” し,形式的に解いた後, 終状態を自己無撞着に求める方法である.
 この非線形応答理論による結果は外力が十分小さい場合,1次では線形応答理論による結果を再現するが,非線形な項は通常の摂動論とは異なる結果を出す.また, 臨界点直上やその近くでの応答も求めることができる.さらに, ハミルトニアン平均場モデルにこの手法を適用し,具体的に物理量を求め, 臨界現象について議論する.

 本発表は山口義幸氏(京大情報)との共同研究[3]による.

[1] A. Campa, T. Dauxois, and S. Ruffo, Phys. Rep. 480, 57 (2009).
[2] C. Lancellotti and J. J. Dorning, Trans. Th. Stat. Phys. 38, 1 (2009).
[3] SO and Y. Y. Yamaguchi, Phys. Rev. E 89, 052114 (2014).

講師:鹿野 豊 氏
   (分子科学研究所)
題目:操作的観点から見た物理学法則の再構築の試み
日時:2014年5月14日 (水)15:00~17:00
場所:奈良女子大学理学部C棟141教室

概要:
 今までに確立されてきた物理学法則は、その後の物理現象を説明するために演繹的な体系が大抵の場合、とられてきた。それは物理現象を記述するためにハミルトニアンをまずは用意し、それと初期条件さえ決まれば原理的にはすべての現象は決まるはずであるという考えに基づいていた。しかし、新しい物理学法則を見いだそうとする際にこの考え方では限界があるのではないか?
そこで、我々は操作論的観点から物理学理論を再構築を目指し、操作論的観点で理論が構築された情報理論を機軸にして、現在、どこまでであれば、物理学法則と情報理論の対応関係が明確に出来るかを論じる。これまでのところ、熱力学のトイモデルである非対称な場合も含むシラードエンジンと平衡統計力学の場合について我々の結果を照会する。そして、現状の道具立てでの限界も論じる。そして、本セミナーでは操作論的観点での物理学理論を再構築するという試み事態の意義も議論したいと思う。
本研究は東京工業大学の細谷暁夫氏と大阪市立大学の丸山耕司氏との共同研究結果によるものである。

参考文献:
Phys. Rev. E 84, 061117 (2011). arXiv:1301.4854.
日本物理学会誌5月号ラ・トッカータ欄

hishi

To the homepage of Nara Women's University奈良女子大学, 物理科学科, 非平衡ダイナミクス研究室
Since April 1 2014