セミナー情報2016

非平衡ダイナミクス研究室

Japanese/ English
home
研究室紹介
メンバー
セミナー
論文
リンク
アクセス

2016年度

非平衡ダイナミクスセミナー
講演:島 伸一郎(兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科)
題名: 局所大域結合振動子に現れる振動パターン
場所: 奈良女子大学理学部C棟141教室
日時: 5月20日(金)午後3時

概要
 同相タイプの局所拡散結合と非同相タイプの大域結合を持つ、線分上に与えられたある種の位相振動子系について考える。  パラメータを調整することで結合の局所性と大域性のバランスを変えると、系の安定状態が一様定常解から, 非一様定常解を経て, 振動解へと分岐すること見る. 特つ、大域性の強いパラメータ領域において、振動解の軌道が微小な摂動によって大きく乱れるが、しばらく経つと元の周期解に戻ってく ることを数値的に示す。  このことは、振動解が線形不安定であるが大域安定であることを示唆する。  この興味深い性質は、大域結合極限における系に、安定なヘテロクリニック・ループによって結合された2点クラスター状態が 存在 する ことと密接に関連していると考えられる。



非平衡ダイナミクスセミナー
講演:石崎 章仁(自然科学研究機構 分子科学研究所)
題名: 凝縮相量子ダイナミクスの理論と光合成エネルギー移動・電荷分離への展開
場所: 奈良女子大学理学部C棟141教室
日時: 2月22日 (月) 15:00~16:30

概要
 光合成光捕集系における色素タンパク質複合体は、捕捉された太陽光を確実に電気化学エネルギーに変換できるよう巧妙に組織され ている。捕捉された太陽光が色素分子の電子励起エネルギーとなり、ほぼ100%の収率で反応中心へ輸送され電気化学エネル ギーに 変換される。しかし、その驚異的なエネルギー変換効率の物理的理由は未だ不明である。  従来、凝縮相におけるエネルギー移動を記述する標準的な理論として「電子励起系とタンパク質環境との相互作用を摂動として 扱う Redfield理論」と「電子励起間の静電相互作用を摂動として扱うFörster理論」が用いられてきた。ところが、天然の 光合成光捕集系におけるエネルギー移動は両理論の妥当性が明らかで無い中間領域で実現しており、その動態の記述と理解は光合 成光 捕集系の化学物理・生物物理学研究において大きな問題として残されていた。  多くの理論研究が高次摂動論の構築に向かう中で、我々はタンパク質環境が誘起する色素分子の電子励起エネルギーの「動的揺 らぎ の時間スケール」に目を向けた。動的揺らぎの相関時間を実験的に得ることができる非線形レーザー分光法3-Pulse Photon Echo Peak Shift (3PEPS) のデータから、揺らぎの時間スケールがエネルギー移動のそれと同程度であることを見出し、Redfield理論の欠陥はその低次の摂動論に起因するのではなくマルコフ近似 すなわち動的揺らぎの時間スケール記述の欠如にあることを指摘した。この洞察に基づき、色素電子状態の揺らぎとタンパク質の 局所 的な歪み・応答の間に成り立つ揺動散逸関係に注意しながら動力学モデルを構成し数値計算を行うことでRedfield理論と Förster理論とを補間することに成功した。  講演では、両理論では記述不可能な中間領域で起こるエネルギー移動ダイナミクスの様相、特に、天然の状況に対応するパラ メータ 領域でこそエネルギー移動の速度が最大化・最適化されていることを議論したい。  さらに、量子情報物理学の研究領域で量子エンタングルメントの測度として提案されたconcurrenceを用いて動的揺 らぎ に曝されたエキシトン(複数の色素に非局在化する電子励起の量子的重ね合わせ状態)の頑健性・脆弱性を考察し、さらに、量子ダイ ナミクスの数値計算結果および電子励起エネルギーの揺らぎを反応座標とした断熱自由エネルギー面を解析することで、天然の光 合成 系に対応するパラメータ領域においてはエネルギー移動に要する活性化自由エネルギーがほぼ0となっていることを示し、光合成光捕 集系における高速エネルギー移動の物理的起源を議論したい。




To the homepage of Nara Women's University奈良女子大学, 物理科学科, 非平衡ダイナミクス研究室
Since April 1 2014