セミナー情報2022

非平衡ダイナミクス研究室

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2022年度

非平衡ダイナミクスセミナー
講演:津田 一郎(中部大学創発学術院/AI 数理データサイエンスセンター)
題名: 脳の機能分化と変分問題
場所: オンライン+対面C141
日時: 2月22日(水)14時40分-

概要
 脳の機能分化はどのようにして起こるのだろうか?この問題に対して、情報論的な観点から 定式化を行い、数理モデルによって機能分化を実現する。定式化は系の力学系自体を拘束条件に 含めた変分問題として行う。ハミルトン系の拘束条件付き変分問題は古くから知られ、 ディラックの処方などがある。直接は機能分化の問題と関係しないが、時間が許せばこれにも触れる予定である。



非平衡ダイナミクスセミナー
講演:津田 一郎(中部大学創発学術院/AI 数理データサイエンスセンター)
題名: カオス力学を基軸にした複雑系脳科学の展開 — 脳科学の数学原理を求めて
場所: オンライン
日時: 11月14日(月)15時00分-16時30分

概要
 カオス力学系を基盤にして、長年脳のダイナミクスの研究を行ってきた。 脳の解釈学を提唱し、脳ダイナミクスに潜む数学的構造を抽出することで脳機能を解釈してきた。 セミナーの前半では、特に記憶のダイナミクスについて、確立した非平衡神経回路モデルの結果を紹介し、 脳ダイナミクスとカオス力学系の関係を述べる。 セミナーの後半では、 最近の研究テーマである脳の機能分化に対する数理科学的アプローチを紹介する。 リザバーコンピューターのメタパラメーターを進化的に変化させる枠組みと 力学系ネットワークの進化ダイナミクスの枠組みがこの問題に対して有効であることを示す。 関連して、バコノミック力学という少し変わった変分問題も紹介する。



中間発表
講演:田口 真実(奈良女子大学大学院人間文化総合科学研究科数物科学専攻)
題名: phase field法を用いた数理モデルの研究
場所: C141
日時:  10月20日(木) 14時00分-14時30分

概要
 Here-Shawセルを用いたビスカスフィンガリング現象は有名な実験である。例え ば、ゲルや粉体中に空気を注入した差に見られるフィンガリングパターンや、水 分を含む多孔質媒体や徐々に乾燥していく粘弾性体に入る亀裂のパターンなどが ある。これらはいずれも流体の圧力により亀裂が進展する現象である。そこで、 今回は弾性的に振る舞う多孔質媒体中で、流体の圧力により亀裂が成長する数理 モデルを作りたいと考えた。本研究では、既存の破壊のフェーズフィールドモデ ルを参考にし、新たに多孔質、圧力場を考慮した数理モデルを考えている。この 2つの要素を導入したことで、自由エネルギーの式、透水係数κ、亀裂の幅εなど の改良・追加などを検討する必要がある。 本発表では、数理モデルの導出と今考えられる問題点について報告する。



中間発表
講演:原 明穂(奈良女子大学大学院人間文化総合科学研究科数物科学専攻)
題名: Granular raft形成過程での水面の形のシミュレーション
場所: C141
日時:  10月20日(木) 14時35分-15時05分

概要
 水に疎水性の粉を浮かべると、粒子は自発的に集まってクラスターを形成する。その凝集体は粒状のいかだ(Granular raft)と呼ばれている。形成されたGranular raftは、その上に水滴を乗せられるなど、いかだのように重さに耐えられるようになることが先行研究により報告されている(Etienne Jambon-Puillet,2016)。本研究は粉が集まるまでの過程に着目し、熱力学の知識を用いて方程式を立てたうえで数値計算によって解くことで、どのような過程で粉が凝集するのかを明らかにするものである。



中間発表
講演:青柳 紗月(奈良女子大学大学院人間文化総合科学研究科数物科学専攻)
題名: 真正粘菌変形体の外力に対する応答
場所: C141
日時:  10月20日(木) 15:10-15:40

概要
 真正粘菌変形体は多核単細胞生物でありながら、体全体として統制のとれた振る舞いを見せる。連結性を維持しつつ体の形を変形させて周囲を隈なく探索し、前端ではゾルゲル転換をしながら前進し、後方では網目状の輸送管を作りネットワークを形成する。本研究では、強制的に外力を加えることによる変形体の応答を観察することで、その行動原理の理解することを目的としている。実験の方法として、回転放物面状の寒天培地の上に這わせた変形体を回転させることで過重力環境を作成し、変形体の応答を観察した。本発表では外力に勾配のある環境、過重力環境での実験の結果を報告する。



中間発表
講演:佐久間 綾子(奈良女子大学大学院人間文化総合科学研究科数物科学専攻)
題名: パラフィンの急冷却によって発生する亀裂の研究
場所: C141
日時:  10月20日(木) 15:50-16:20

概要
 亀裂現象は多くの物品において観察され、その対策・保護のために多くの労力と高い技術が求められている。この方法を検討するためには、亀裂現象を科学的に解明することが不可欠であり、その取り組み過程においては現象を客観的に評価できる実験系の構築が必要となる。亀裂の挙動の観察では、例えばガラスを割った時の多様な分岐が代表的であるが、上手く制御しないとその進行速度が音速レベルとなることが多いため、再現性の確保と理論化が難しい問題となる。そこで、本研究では冷却プロセスにおける収縮挙動で亀裂を生じることが知られているパラフィンワックスを対象とし、パラフィンワックスに発生する現象を詳細に観察することで、亀裂の発生機構の理論化を目指す。



中間発表
講演:中塩屋 璃奈(奈良女子大学大学院人間文化総合科学研究科数物科学専攻)
題名: 高温のパラフィン液滴と水面との衝突における固化膜形成のダイナミクス
場所: C141
日時:  11月26日(金) 13時00分-13時45分

概要
 液体同士の衝突にはクラウンの形成や気泡の巻き込みなど興味深い現象が多く見られる。しかし、その現象はほんの一瞬でありまた衝突の形跡を残さないため解析することは難しく、これまでX線や超高速カメラなどを用いながら解析が進められてきた。今回我々は、凝固点の低いパラフィン(凝固点=56-58°C)を用いることで液体同士の衝突に形跡が残るような衝突実験を行いその形跡から解析を行なった。実験は高温のパラフィン液滴を温度管理した水面に滴下し行い、水に冷やされ固まったパラフィン(以降、固化膜と呼ぶ)と衝突時の水面のスローモーション映像を解析することで研究を進めた。なお、コントロールパラメーターは水面の温度T(°C)と液滴衝突速度v(mm/s)である。実験の結果、パラメータによって異なる特徴を持った固化膜が得られた。本発表では、水温の温度T(℃)を固定し衝突速度v(mm/s)をパラメータとしたときの固化膜の形成を報告し、成因について議論する。



非平衡ダイナミクスセミナー
講演:住野 豊(東京理科大学)
題名: 凝集物を生成する反応性流体を用いた突起形成
             動的クラスタリングを示す電場下の2種コロイド粒子集団系
場所: オンライン
日時: 2022年7月15日(金)16時30分-18時00分

概要
 非線形非平衡条件を系に印加すると,散逸構造と呼ばれる時空間構造が現れる.我々はこうした散逸構造を広い意味での生命現象と捉え,モデル実験系の構築とその理解を行なっている.今回はこうした散逸構造の中でも,
1. 地盤中での流体移動現象を模倣した凝集物を生成する反応性流体の突起形成パターンの理解と制御 および 2. 生物の集団挙動を模倣した外部電場下で駆動された2種コロイド粒子系の集団挙動 に関して紹介する.
 これらの研究はそれぞれ独立の内容となるので,中間の質疑を挟みながら話を進めたい.以下簡単に内容をそれぞれ紹介する.
1. 地盤中の流体移動は岩盤間の応力分布を変化させ,ケースによれば地震を誘起することが知られている.本研究では,特に岩盤中の流体が反応によって媒質の透水性を変化させることに着目し,反応により凝集物を生成するモデル実験系を構築した.また,こうした岩盤間ではダルシー則に代表される摩擦環境下であることに留意し,狭い空隙を持つセル,ヘレショウセルを用いて実験を行なった.本発表では,こうした凝集物を生成する実験系の中でもセルに空間的に埋め込まれた不均一性を導入した際に生まれる時空構造に関して紹介する.
2. 周囲のエネルギーを用い,局所的に運動量を生成する素子(自己駆動粒子)の集団をアクティブマターと呼ぶ.本研究ではこうした自己駆動粒子を交流電場を印加した極板間に水相中に粒子分散した系で実現した.特にここでは2種類の異なる粒子を導入することで,自己駆動粒子が自発的に形成できることを紹介する.また,我々はこの際粒子集団が,安定化せず凝集・散逸を繰り返す集団挙動を示すことも明らかにした.この結果を,粒子のサイズと粒子間の相互作用を電気浸透流の影響を取り入れることで表した粒子ベースの数理モデルにより再現できることを示す.




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